本事例は、当社(株式会社UniGain)の支援内容をもとに作成した導入モデルケースです。数値は実際の支援に基づく代表値で、特定のお客様の実話ではありません。名古屋市の金属加工(町工場)を想定し、属人化していたExcel集計を自動化して月末残業を解消した進め方をまとめました。
お客様の状況|名古屋市・金属加工(従業員25名・事務2名)
自動車部品まわりの金属加工を手がける町工場。従業員25名のうち事務は2名で、受注・在庫・出荷データのExcel集計とレポート作成が特定の事務員に属人化し、その担当者が毎月およそ40時間を費やして資料を作り続けていました。
「その人が辞めたら回らない」という専務の不安が出発点でした。月末はその担当者の残業が常態化し、見積も過去ファイルを探して都度手作業で作っていました。他の社員は集計の仕組みを把握しておらず、有給休暇も月末は取りにくい状態が続いていました。
相談を受けた当初は、Excelの関数を直すだけで十分だと考えていました。しかし話を聞くほどに、集計の元になるデータそのものが表記ゆれだらけで、関数の修正だけでは根本解決にならないことが現場の担当者への聞き取りで分かってきました。
経営側の判断として、事務2名体制のまま業務量を減らすのか、増員するのかという分岐点でもありました。増員より先に、まず今の業務量そのものを圧縮できないかという相談から支援が始まり、3か月の計画で動き出しました。
- 受注・在庫・出荷の集計が特定の事務員に属人化(月約40時間)
- 月末は担当者の残業が常態化
- 見積は過去ファイルを探して都度手作業
取り組んだこと(期間:約3か月)
Excel集計と月次レポート作成を、AIとノーコードツールで自動化しました。以前は月末にまとまった時間を取って行っていた作業を、毎月のルーティンをボタン一つで完了できる状態にすることを、まず最初のゴールとして設定しました。
自動化の対象にしたのは、受注一覧表・在庫棚卸表・出荷実績表の3つの帳票です。受注データは基幹システムから週次でExcelに書き出し、在庫は担当者が毎朝手入力、出荷は納品書の控えを月末にまとめて集計する運用で、3つとも書式がばらばらのまま長年運用されていました。
この3系統をノーコードツールで連携し、受注が入力された時点で在庫と出荷見込みが自動反映される仕組みに変更しました。月次レポートも、集計済みのデータをテンプレートに流し込むだけでグラフ付き資料が完成する形にし、体裁を整える作業自体をなくしました。
さらに、過去の見積データをもとに見積の下書きをAIで生成し、担当者は調整のみを行う形に変更しました。手順は操作画面のスクリーンショット付きでマニュアル化し、担当者が変わっても回る状態まで伴走しました。
つまずきと対処|データ整備に想定の倍の時間がかかった
過去データには品番や単位の表記ゆれが多く、最初のデータ整備に想定の倍の時間がかかりました。ここでつまずく前提で計画を立てていなかったことが、そもそもの見通しの甘さで、着手前の想定より2週間ほど余分にかかり、当初のスケジュールを組み直しました。
表記ゆれの具体例は、品番の全角・半角の混在、ハイフンの有無、数年前に廃番になった旧品番が現行データに残っている、といったものでした。同じ部品が違う品番で複数登録され、在庫が二重に数えられているケースも十件以上見つかりました。
対処として、まず正しい品番を確定させるマスタ表を作り、旧品番と現行品番の対応関係を一覧化しました。現場の担当者に一つずつ確認してもらう地道な作業でしたが、ここを飛ばして自動化を進めると、後工程の在庫や見積の数字がずれる原因になります。
ここを焦らず丁寧に進めたことで、自動化後の誤集計がほぼ出ず、結果的に近道になりました。製造業の現場を支援する中で感じるのは、自動化の成否はツールの高性能さよりも元データをどれだけ整えられるかで決まるという点です。
成果|集計の月40時間を削減し、月末残業がほぼ解消
集計・資料作成の工数を大幅に削減し、月末残業がほぼ解消しました。属人化も手順化によって解消し、担当者が休んでも別の社員が集計作業を代われる状態になり、月末だけ出社時間が遅い他の社員も、抵抗なくマニュアルを見ながら代役に入れるようになりました。
見積作成も、下書きをAIが自動生成する形に変えたことで、担当者は数量と単価を確認して微調整するだけで済むようになりました。過去の類似案件を探す手間がなくなった分、見積提出までのリードタイムも短くなり、受注確度の高い案件から優先的に対応できるようになりました。
専務からは、数字の削減以上に「誰かに依存しない体制になったこと」への評価をいただいています。担当者本人も、月末に残業前提で予定を組む必要がなくなり、繁忙期の見通しが立てやすくなったと話しています。
| 指標 | 導入前 | 導入後 |
|---|---|---|
| 集計・資料作成 | 月40時間 | 大幅削減(年約60万円のコスト削減) |
| 見積作成 | 1件30分 | 約10分 |
| 月末残業 | 常態化 | ほぼ解消 |
| 業務の属人化 | 1名に依存 | 手順化で解消 |
他の定型業務への横展開|日報・在庫・見積
受注集計の自動化が定着した後、同じ考え方を日報・在庫・見積の3業務に広げました。現場の日報は紙とExcelが混在していましたが、スマートフォンから入力できるフォームに変更し、その場で在庫データに反映される仕組みにしました。
在庫管理は、発注点を下回った品番をAIが自動で拾い上げて担当者に通知する仕組みに変更しました。従来は棚卸のたびに手作業で確認していた欠品リスクを、日次でチェックできるようになり、急な欠品による納期遅れも減りました。
見積作成は、過去の類似案件をAIが自動で探し出し、単価と数量の下書きを提示する形に変更しました。担当者は下書きを確認して調整するだけで済むようになり、ゼロから見積を組み立てる手間がなくなり、繁忙期でも見積の停滞が起きにくくなりました。
この3業務に共通していたのは、紙やExcelへの手入力が起点になっていた点です。入力の起点を一つに絞り、そこから他のデータへ自動で波及させる設計にしたことが、横展開をスムーズにした要因で、最初の受注集計と同じ設計思想を使い回せました。
- 日報:紙とExcelが混在→スマホ入力でその場で在庫に反映
- 在庫:棚卸のたびに手作業で確認→発注点割れをAIが自動通知
- 見積:過去ファイルを探して都度作成→類似案件の下書きをAIが提示
| 業務 | 従来 | 自動化後 |
|---|---|---|
| 日報 | 紙とExcelが混在 | スマホ入力でその場で在庫に反映 |
| 在庫 | 棚卸のたびに手作業で確認 | 発注点割れをAIが自動通知 |
| 見積 | 過去ファイルを探して都度作成 | 類似案件の下書きをAIが提示 |
名古屋・東海の町工場が同じ取り組みで使える補助金と相談先は?
愛知県は製造品出荷額等が58兆218億円(2023年)と47年連続で全国1位のものづくり県で(経済産業省「2024年経済構造実態調査」をもとにした愛知県の集計)、本事例のような自動車部品まわりの町工場が数多くあります。取引先ごとに書式の違う注文書や納品書をExcelに打ち直す作業は、こうした現場で特に負担になりやすい業務です。
集計の自動化に使うクラウドツールやソフトウェアは、国の「デジタル化・AI導入補助金」(旧IT導入補助金)の対象になる場合があります。事務局に登録されたIT導入支援事業者と組んで申請する仕組みで、通常枠は補助率1/2以内、補助額5万円以上450万円以下です。6次の締切は2026年10月30日17時で、以降は7次公募回に移ります。7次からは1人当たり給与支給総額の向上が申請要件に加わると事務局が2026年10月9日に告知しており、締切日は事務局の事業スケジュールで確認が必要です。
名古屋市内の会社なら、市の「中小企業デジタル活用支援補助金」も選択肢になります。名古屋市新事業支援センターか名古屋商工会議所での事前相談が申請要件で、2026年度の受付は終わっていますが、次の公募に向けて相談しておく価値はあります。どの制度が合うか分からないときは、愛知県よろず支援拠点(ウインクあいち)で無料相談ができます。
本事例でデータ整備に2週間余分にかかったように、補助金には事業期間の縛りがあります。申請してから表記ゆれの多さに気づくと計画がずれ込むため、受注・在庫・出荷の帳票を先に一度並べて、品番の揺れ具合を確かめてから申請に進むのが安全です。どの制度も採択は保証されないので、補助金なしでも割に合う範囲から始めてください。
- 国:デジタル化・AI導入補助金(IT導入支援事業者と共同申請。7次から給与支給総額の向上が要件に追加)
- 名古屋市:中小企業デジタル活用支援補助金(事前相談が要件、2026年度は受付終了)
- 相談先:愛知県よろず支援拠点(ウインクあいち、無料)
同じ町工場が再現するための進め方
属人化したExcel業務の自動化は、いきなり全部を仕組み化しようとすると挫折しがちです。本事例でうまくいったのは、まず受注集計という一業務に絞り、そこで型ができてから在庫・出荷へ広げた順番でした。対象を一つに絞るほど、最初に必要なデータ整備の量も読みやすくなり、現場の負担が小さくなります。
あわせて、自動化と同時に手順をマニュアル化しておくことが、属人化の再発を防ぐ鍵になります。『担当者が辞めたら回らない』状態を抜けるには、ツール化だけでなく、誰が見ても同じ手順で回せる状態まで整えることが欠かせません。
設定よりも、元データの表記ゆれをどこまで整えられるかが、自動化後の誤集計を左右します。日報・在庫・見積のように対象業務が増えるほど、この土台づくりの丁寧さが後々の運用の安定度に直結し、後戻りする手間を減らします。
進め方の順番を誤らなければ、事務2名体制のような小規模な現場でも、外部に一気に任せきらず自社のペースで自動化を進められます。まずは一番負担の大きい業務から着手し、型ができた業務から順に広げていくことを、同じ悩みを抱える町工場にはおすすめしています。
- 自動化する業務を一つに絞る(まずは受注集計など)
- 品番・単位などの表記ゆれを先に整える
- ボタン一つで回る状態にしてから次の業務へ広げる
- 手順をマニュアル化し、担当者が変わっても回るようにする
よくある質問
Qこの事例は実在の工場ですか?
本ページは、当社の支援内容をもとに作成した導入モデルケースです。数値は実際の支援に基づく代表値で、特定の工場の実話として公開しているものではありません。実際のご相談では、貴社の業務とデータの状況に合わせてご提案します。
QExcelがバラバラでも自動化できますか?
可能ですが、最初に品番・単位などの表記ゆれを整える『データ整備』が必要です。ここに想定より時間がかかることが多い一方、丁寧にやるほど自動化後の誤集計が減り、結果的に近道になります。まずは対象業務を1つに絞って整備するのがおすすめです。
Q受注集計以外の業務にも同時に自動化を広げられますか?
同時に広げることも可能ですが、最初は受注集計など一つの業務に絞って型を作ることをおすすめします。型ができた後であれば、日報・在庫・見積のような関連業務への横展開はスムーズに進みやすくなります。
Q名古屋の町工場がExcel集計の自動化に使える補助金はありますか?
国の「デジタル化・AI導入補助金」が候補になります。事務局に登録されたIT導入支援事業者と組み、登録済みのツールを導入する場合が対象です。2026年10月30日の6次締切以降に申請する場合は、7次から加わる給与支給総額の要件を満たせるかを先に確認してください。名古屋市内なら市の中小企業デジタル活用支援補助金もありますが、事前相談が要件で、2026年度の受付は終わっています。
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