鳴り続ける電話に手を止められ、本来の業務が進まない。営業時間外の着信を取りこぼし、その中に予約や新規の問い合わせが混じっている。電話対応は多くの会社で当たり前になっている割に、解決手段が知られていない課題です。この記事では、電話対応をAIで自動化する仕組み(ボイスボット)の基本から、一次受付を仕組み化する導入手順、自動化できる電話と人が対応すべき電話の線引き、導入効果と費用の目安までを具体的に解説します。電話業務の負担を減らしたい中小企業の経営者・担当者向けに、失敗しない進め方をまとめました。
電話対応をAI自動化で解決できる3つの課題
電話対応は、多くの会社で「人が出るのが当たり前」とされてきました。しかし人手不足が進むなか、その負担は無視できない大きさになっています。AIによる電話自動化が解決できる課題は、大きく3つに整理できます。
1つ目は業務の圧迫です。営業電話や、同じような問い合わせの電話がかかってくるたびに、担当者は作業を止めて対応しなければなりません。集中が必要な仕事ほど、この中断のコストは大きくなります。2つ目は機会損失です。営業時間外や混雑時に出られなかった電話の中に、予約や新規の問い合わせが含まれていれば、そのまま売上の取りこぼしになります。
3つ目は顧客満足度の低下です。担当者が不在で転送できずに長く待たせたり、伝言の引き継ぎがうまくいかなかったりすると、相手に手間をかけてしまいます。これらは電話業務として当たり前に受け入れられがちですが、一次受付をAIに任せることで、その多くを解消できます。
- 業務の圧迫:問い合わせや営業電話のたびに作業が中断される
- 機会損失:営業時間外・混雑時の着信を取りこぼす(予約・新規を含む)
- 満足度の低下:不在転送ができず待たせる、伝言の引き継ぎが漏れる
AIで電話対応を自動化する仕組み(ボイスボット)
電話対応の自動化を担うのが、ボイスボットと呼ばれるAI電話自動応答の仕組みです。動きはシンプルで、かかってきた電話の発話を音声認識でテキスト化し、AIがその内容を解析して、適切な回答を合成音声で読み上げて応答します。人が一件ずつ受けなくても、AIが一次対応を担えるのが特徴です。
実際の運用では、AIが全ての電話を抱え込むのではなく、内容に応じて振り分けます。重要な用件や複雑な相談は人のオペレーターへ転送し、よくある質問にはAIが音声で答えます。Webで手続きしてほしい問い合わせには自動でショートメッセージ(SMS)を送り、サイトやフォームへ誘導します。それ以外の用件は、AIが対話形式で要件を聞き取り、内容を記録します。
顧客管理システム(CRM)と連携させれば、聞き取った内容や相手の情報をそのままシステムに書き込めます。オペレーターが対応する前に用件を把握できるため、折り返しや二次対応がスムーズになります。こうして「つながらない」「待たせる」をなくしながら、人が対応すべき電話だけに集中できる体制をつくれます。
電話の取り次ぎはAIでどこまで自動化できる?
代表電話にかかってきた電話を担当者へつなぐ「取り次ぎ」は、電話自動化のなかで最も効果が見えやすい部分です。AIが相手の名前と用件を聞き取り、担当者や部署の携帯・内線へそのまま転送するところまで自動化できます。受付が席を立って担当者を探す、不在なら伝言メモを書いて机に置く、という工程が消えるため、取り次ぐ側と取り次がれる側の両方の時間が戻ってきます。
取り次ぎ自動化の方式は3つに分かれます。番号のプッシュ操作で分岐させるIVR(自動音声応答)、相手が話した内容を音声認識して転送先を判断するボイスボット、AIが用件を聞き取って担当者にテキストで通知し折り返す方式です。部署が明確に分かれた代表電話ならIVRで足りますが、用件が多岐にわたる受付ではボイスボットのほうが相手を迷わせずに済みます。
実務でつまずきやすいのは番号と精度の2点です。今使っている電話番号を変えたくない場合は、既存番号から自動応答サービスへ転送する設定にすれば番号はそのまま残せます(サービス側が発行する050番号を専用ダイヤルとして使う方法もあります)。もう1点は聞き取り精度で、社名・商品名・地名などの固有名詞は最初の数週間の通話ログを見ながら辞書に登録していくと安定します。通話は録音と文字起こしが残るため、伝達ミスの確認や、電話口での理不尽な要求への記録としても機能します。
実際の支援現場でよくあるのは、取り次ぎの半分近くが「担当者が不在で折り返し」に終わっているケースです。この場合、無理に転送までつなごうとせず、AIに相手・用件・希望時間だけを正確に聞き取らせてチャットやメールへ通知する設計にしたほうが、担当者が移動中でも要件を把握でき、折り返しが速くなります。
クラウド型のAI電話サービスは初期費用0円で、着信30件までなら月額0円の無料プラン、有料プランは月額3,980円(税抜、年払いなら月3,317円)から使えるものもあり(アイブリー/IVRy、2026年9月時点)、相談から運用開始まで1〜2週間程度で立ち上がります。
| 方式 | 相手の操作 | 向いている電話 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|---|
| プッシュ式IVR | 「◯◯の方は1を」で番号を押す | 部署がはっきり分かれた代表電話 | 分岐が4つ以上になると相手が迷う |
| ボイスボット(音声認識) | 用件をそのまま話す | 用件が多岐にわたる受付・予約 | 社名や商品名の聞き取り精度の調整が要る |
| AI聞き取り+通知・折り返し | 用件を話して電話を切る | 担当者が外出・現場にいる会社 | 即答が必要な用件には向かない |
一次受付を仕組み化する導入手順
電話対応のAI自動化は、いきなり全件を任せるのではなく、一次受付を仕組み化する形で段階的に進めると失敗しにくくなります。手順は次の4ステップです。
最初に行うのは、現状の着信内容の棚卸しです。どんな用件の電話が、どの時間帯に、どれくらいの頻度でかかってくるかを1〜2週間記録します。これにより、AIに任せられる定型的な用件と、人が対応すべき用件が見えてきます。次に、その用件ごとに応答シナリオを設計します。よくある質問への回答、予約や折り返しの受付、SMSでの誘導など、AIがどう答えるかを具体的に決めます。
続いて、人に転送する条件(転送ルール)を決めます。「クレームを示す言葉が出たら即転送」「指定の用件は担当部署へ」といった分岐を用意し、AIで完結させる範囲と人に渡す範囲をはっきりさせます。最後に小さく運用を始め、実際の通話ログを見ながらシナリオを直していきます。最初から完璧を目指さず、よくある用件から自動化し、徐々に対応範囲を広げるのが定着のコツです。
- ①着信の棚卸し:用件・時間帯・頻度を1〜2週間記録する
- ②応答シナリオ設計:よくある質問・予約・SMS誘導の応答を決める
- ③転送ルール設定:人に渡す条件(クレーム・複雑な相談など)を定義する
- ④小さく運用・改善:通話ログを見てシナリオを継続的に調整する
自動化できる電話・人に残す電話の線引き
AI電話自動化の成否を分けるのは、何を自動化し、何を人に残すかの線引きです。自動化に向くのは、回答が決まっている定型の用件です。営業時間や場所の案内、よくある質問、予約や折り返しの受付、フォームへの誘導などは、AIが正確かつ24時間対応できます。同じ内容の問い合わせを何度も人が答えていた場面ほど、自動化の効果は大きくなります。
一方で、クレーム対応や、事情が複雑で個別判断が必要な相談は、人が対応すべき領域です。AIは決まった応答は得意ですが、相手の感情をくんだ柔軟な対応や、例外的な判断には限界があります。無理に全てを自動化しようとすると、かえって満足度を下げてしまいます。AIには一次受付と振り分けを任せ、人は本当に人でなければ解決できない用件に集中する、という役割分担が基本です。
導入時に確認したいのが、AIが事実と異なる回答を作ってしまう「ハルシネーション」への対策です。回答の元になる情報(営業時間や料金、手順など)を正しく登録し、答えられない用件は無理に回答せず人へ転送する設計にしておくと、誤案内のリスクを抑えられます。よくある質問への自動応答は、電話だけでなくチャットボットと組み合わせると窓口全体の負担をさらに減らせます。
電話の取り次ぎをAI導入するとき最初に決める4つのこと
取り次ぎの自動化は、応答シナリオを作り込む前に決めることが4つあります。電話番号の扱い、回線工事の要否、利用開始前の本人確認、迷惑電話への構えです。ここを先に固めると、運用開始までの日数が読めます。
電話番号は、今の番号を残したまま自動応答サービスへ転送する方法と、サービス側が発行する番号を代表番号にする方法の2択です。発行される番号は050だけでなく、市外局番付きの固定電話番号を選べるサービスもあります。社内にインターネット回線があれば電話回線の工事は不要で、既存のネット環境をそのまま使って始められます。
見落とされやすいのが、利用開始前の本人確認です。電話番号の不正利用を防ぐため、申請者の本人確認書類や法人の所在地が分かる書類の提出を求められ、この確認に数日かかります。書類がそろっていれば申し込みから1週間程度で運用を始められますが、逆に書類待ちで止まると、その分だけ開始日が後ろにずれます。
迷惑電話や強い口調の電話への構えも、最初に決めておくと後が楽になります。冒頭の音声案内に「品質向上のため録音しております」と入れるだけで、電話口での理不尽な要求は起こりにくくなります。特定の番号を着信拒否に回すブラックリスト機能を持つサービスもあります。
- 電話番号:既存番号から転送するか、サービス発行の番号(050/市外局番付き)を代表にするか
- 回線工事:インターネット回線があれば不要。既存のネット環境で始められる
- 本人確認:申請者の本人確認書類・法人所在地の確認に数日。そろえば1週間程度で開始
- 迷惑電話対策:冒頭の録音アナウンスと、着信拒否リストの有無を確認しておく
AI電話サービスはどう選ぶ?比較で確認したい5つの基準
AI電話サービスは十数社から提供されていて、機能名だけを並べるとどれも似て見えます。アイブリーが2025年12月に導入企業へ行った独自アンケート(有効回答230件)では、最終的な決め手は料金34.4%、導入実績26.2%、必要な機能18.0%、サポート体制14.8%、既存システムとの連携4.9%の順でした。料金を最優先する会社が多い一方で、月額表示だけで選ぶと運用後に費用や機能の不足が見つかります。
比較するときは、次の5つを同じ条件で並べてください。1つ目は月額総額です。基本料金に電話番号の維持費と通話の従量料金を足し、自社の想定着信数で計算します。2つ目はプランごとの上限です。作れる音声分岐の数や通話履歴の保存期間は、同じサービスでもプランによって差があります。3つ目は通知先で、聞き取った用件をメール・LINE・チャットのどこへ届けられるかを確認します。
4つ目は着信の振り分け機能です。登録した取引先の番号だけを担当者へ直接つなぐホワイトリストと、営業電話を着信拒否に回すブラックリストがあるかどうかで、担当者が受ける電話の件数が変わります。5つ目は効果の見える化です。着信件数と自動化できた件数、通話時間を管理画面で確認できれば、削減できた人件費を毎月の数字で追えます。
判断に迷ったら、無料枠やトライアル期間に本番の着信を1〜2週間流し、従量料金の実額と聞き取り精度を確かめてから本契約に進みます。資料上の比較より、自社の電話で試した数字のほうが判断を誤りません。
| 基準 | 確認すること | 見落とすと起きること |
|---|---|---|
| 月額総額 | 基本料金+番号維持費+従量通話料を想定着信数で計算 | 月額表示は安いのに請求額が膨らむ |
| プランの上限 | 音声分岐の数・通話履歴の保存期間 | 運用が育つと上位プランへの変更が必要になる |
| 通知先 | メール・LINE・チャットへの用件通知と文字起こし | 聞き取った内容を担当者が見に行く手間が残る |
| 着信の振り分け | ホワイトリスト(直通)・ブラックリスト(着信拒否) | 営業電話も取引先の電話も一律にAIへ回る |
| 効果の見える化 | 着信件数・自動化件数・通話時間の集計画面 | 削減効果を説明できず、継続の判断ができない |
電話対応をAI自動化する費用はいくら?月額0円〜4万円が目安
電話対応をAIで自動化すると、一次受付の多くをAIが担うため、電話業務の約半分を自動化できるケースもあります。その分、担当者の時間が解放され、人手不足の緩和や人件費の抑制、より重要な業務に使える時間の確保につながります。AIは24時間365日対応できるので、営業時間外や混雑時の機会損失を防げる点も大きなメリットです。
効果が出やすいのは、受付の人手が足りていない現場です。たとえば来客や予約が増えて受付担当の業務がパンク気味になっている、スタッフを増やしたいが採用が難しい、電話口での理不尽な要求に担当者が疲弊している。こうした状況では、一次受付をAIに任せるだけで担当者の負担が大きく変わります。クリニックや飲食店、店舗など、定型の問い合わせと予約が多い業種ほど導入の手応えを感じやすい傾向です。
用途別の月額の目安は、代表電話の一次受付・取り次ぎで無料〜4万円程度、予約受付や問い合わせ対応で1万〜5万円程度、コールセンター規模の運用で5万〜15万円以上とされています(ITトレンド「AI電話自動応答サービス12選比較」2026年)。月額プランとは別に電話番号の維持費と通話の従量料金がかかるため、比較するときは月額表示ではなく、自社の想定着信数を当てはめた月額総額で見てください。
費用は、月数千円から使えるクラウド型の自動応答サービスから、コールセンターやCRMと本格的に連携させる構築型まで幅があります。判断の基準は、削減できる対応時間と人件費に対して費用が見合うかどうかです。当社が業務システムの構築を支援したケースでは、対応の仕組み化によって工数を60%削減し、対応速度を2.5倍に高めた実績があります。電話対応の自動化も、まず現状の着信を棚卸ししたうえで、自社に合う仕組みを小さく始めるのが確実です。導入の進め方や事例は事例ページもあわせてご覧ください。
| 用途・規模 | 月額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 代表電話の一次受付・取り次ぎ | 無料〜4万円程度 | 着信30件まで無料のプランもある |
| 予約受付・問い合わせ対応 | 1万〜5万円程度 | AI応答・文字起こしはオプション扱いが多い |
| コールセンター規模の運用 | 5万円〜15万円以上 | 初期設定費やCRM連携の構築費が加わる |
よくある質問
QAIの電話対応で、お客様に冷たい印象を与えませんか?
一次受付や定型の案内をAIに任せ、クレームや複雑な相談は人へ転送する設計にすれば、むしろ「つながらない」「待たされる」を減らせます。AIが用件を先に聞き取るため、折り返しや二次対応もスムーズになり、満足度はかえって上がりやすくなります。
Qどんな業種でも電話対応のAI自動化は使えますか?
予約や問い合わせの電話が多い業種ほど効果が出やすく、クリニックや飲食店、店舗、士業など幅広く活用されています。まずは自社にどんな用件の電話が多いかを棚卸しし、定型的な用件が一定数あれば、一次受付の自動化を検討する価値があります。
Q導入にはどれくらいの期間と手間がかかりますか?
クラウド型なら、書類がそろえば申し込みから1週間程度で始められます。インターネット回線があれば電話回線の工事は不要ですが、利用開始前に申請者の本人確認書類や法人所在地の確認があり、ここで数日かかります。応答シナリオと転送ルールの設定は、着信の棚卸しを先に済ませておくとスムーズです。CRM連携や独自の運用を組む場合は、要件整理から相応の準備が必要になります。
UniGain