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電子帳簿保存法対応を仕組み化する|中小企業の現実的な手順

公開:2026/07/25読了目安 約8分執筆:株式会社UniGain
電子帳簿保存法対応を仕組み化する|中小企業の現実的な手順のイメージ

中小企業が電子帳簿保存法で必ず対応しなければならないのは、3区分のうち「電子取引データ保存」だけです。メールやWebで受け取った請求書・領収書のデータは、2024年1月以降、紙に印刷しただけの保存は原則として認められません。この記事では、義務の範囲の切り分け、改ざん防止と検索要件を満たす具体的なやり方、基準期間の売上高5,000万円以下で使える緩和、無料で始める方法とシステム化に踏み切る判断基準までを、中小企業の実務の順序で整理します。

電子帳簿保存法で中小企業が対応必須なのはどれ?

電子帳簿保存法は3つの区分に分かれています。会計ソフトで作った帳簿をデータのまま保存する「電子帳簿等保存」、紙の領収書をスキャンしてデータ化する「スキャナ保存」、そしてメールやWebでやり取りしたデータを保存する「電子取引データ保存」です。このうち義務は電子取引データ保存だけで、残り2つは任意です。

義務化されたのは2024年1月からです。メールに添付されたPDFの請求書、通販サイトからダウンロードした領収書、Web発行の支払通知書などが対象になります。これらを印刷して紙のファイルに綴じ、元データを削除する運用は原則として認められません。

紙で受け取った請求書や領収書の扱いは変わっていません。紙のまま保管して問題なく、スキャンしてデータ化するかどうかは各社の判断です。まず「データで受け取ったものだけが義務の対象」と切り分けると、対応すべき範囲が一気に狭くなります。

区分対象義務/任意中小企業の優先度
電子取引データ保存メール・Webで受領した請求書や領収書のデータ義務最優先
スキャナ保存紙で受け取った請求書・領収書のスキャンデータ任意余力があれば
電子帳簿等保存会計ソフトで作成した仕訳帳・総勘定元帳など任意会計ソフト更新時に検討

電子取引データの保存要件は2つだけ

満たすべき要件は、改ざん防止(真実性)と、探し出せること(可視性)の2つに集約できます。難しく見えますが、中小企業が実際にやることは、保存先を決める・ファイル名を統一する・改ざん防止の措置を1つ選ぶ、の3つです。この3つが決まっていれば、月末に慌てて探し回る状態は解消します。

改ざん防止の措置には4つの方法があります。タイムスタンプを付与する、訂正削除の履歴が残るシステムで保存する、訂正削除ができないシステムで保存する、そして「訂正削除の防止に関する事務処理規程」を備え付けて運用する方法です。最後の規程による対応は費用がかからず、国税庁がサンプルを公開しているため、システム投資の前に選べる現実的な選択肢です。

可視性の要件は、ディスプレイとプリンタを備えて画面で見られる状態にすることと、取引年月日・取引金額・取引先で検索できることです。検索は専用システムがなくても、ファイル名を「20260725_150000_ユニゲイン商事.pdf」の形式で統一し、フォルダ内の検索機能で探せるようにすれば要件を満たせます。

検索要件が求めるのは、取引年月日・取引金額・取引先の3項目での検索に加えて、日付や金額の範囲指定と、2つ以上の項目を組み合わせた検索です。ただし、税務調査時にデータのダウンロードの求めに応じられる場合は、範囲指定と項目の組み合わせは不要になります。フォルダとファイル名で運用する会社は、この点を押さえておけば専用システムなしでも通ります。

売上高5,000万円以下なら検索要件はどうなる?

基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者は、税務調査などでデータのダウンロードの求めに応じられることを条件に、検索機能の確保が不要になります。基準期間は法人なら前々事業年度、個人事業主なら前々年です。多くの小規模事業者がこの範囲に入ります。

さらに、要件どおりの保存が間に合わない「相当の理由」がある場合の猶予措置があります。この場合も改ざん防止や検索の要件は問われませんが、データそのものの保存は必須です。印刷して原本データを消すことは、猶予措置を使う場合でも認められません。

注意したいのは、この猶予措置の終了時期が2026年7月時点で決まっていない点です。いつ終わっても困らないよう、猶予を前提にした運用ではなく、保存先とファイル名の統一だけは今のうちに済ませておくのが安全です。ルールを決めるだけなら費用はかかりません。

無料で始める方法とシステム化の判断基準

対応の第一歩は、クラウドストレージか社内サーバーに専用フォルダを作り、事務処理規程を備え付けることです。国税庁のサンプルをもとに自社の担当者名と業務フローを書き込めば、その日から運用を始められます。件数が月に数十件までなら、この方法で十分に回ります。

システム化を検討すべきなのは、受領経路が増えたときです。メール、取引先のWebポータル、EDI、電子契約と入口が分かれると、どこに何が届いたかを人の記憶で管理することになり、抜け漏れが起きます。月100件を超えたあたりから、受領から保存までを自動化する仕組みの費用対効果が見えてきます。

実際の支援現場でよく相談されるのは、経理担当者がメールを1件ずつ開いてPDFを保存し直している状態です。この作業は受領から保存までを自動でつなげば省けます。当社の業務アプリ・システム開発は80万円〜が目安で、業務システム構築によって工数60%削減・対応速度2.5倍を実現したお客様の事例を事例ページで紹介しています。

会計ソフトの機能で完結させる方法もあります。クラウド会計サービスの多くは電子取引データの保存機能を備えており、訂正削除の履歴が残るため改ざん防止の要件も満たせます。既に会計ソフトを使っているなら、まず自社の契約プランで対応できる範囲を確認するのが早道です。

月間の受領件数現実的な対応方法追加費用の目安
〜50件共有フォルダ+ファイル名ルール+事務処理規程0円
50〜100件クラウド会計ソフトの保存機能を利用月額数千円〜
100件〜受領から保存までを自動化する仕組みを構築初期80万円〜

対応しないとどうなる?よくある失敗と対処

要件を満たさない保存が直ちに罰則につながるわけではありませんが、保存義務を果たしていないと判断されると、青色申告の承認取消の対象になり得ます。隠蔽や仮装があった場合は重加算税が10%加重される規定もあるため、意図的な改ざんは重い扱いになります。

現場で多い失敗は3つです。1つ目は、PDFを印刷して原本データを削除してしまうこと。2つ目は、担当者ごとのパソコンにデータが散らばり、退職時に所在が分からなくなること。3つ目は、規程を作っただけで運用されず、実際の保存先がバラバラなままになっていることです。

対処はいずれも同じで、保存先を1か所に決め、誰がいつまでに入れるかを業務フローに書くことです。月次の締め処理のチェック項目に「今月受領した電子取引データの保存完了」を1行加えるだけでも、抜けはかなり減ります。担当者が1人しかいない会社ほど、その人が休んだ月に抜けが出るため、保存先とルールを他の人も分かる形で文書に残しておいてください。

電子帳簿等保存を先取りする価値はある?

義務ではありませんが、優良な電子帳簿の要件を満たして保存すると、過少申告加算税が軽減される措置を受けられます。訂正削除の履歴が残る会計ソフトを使い、あらかじめ所轄税務署へ届出書を提出しておくことが条件です。申告漏れがあった場合の過少申告加算税が5%軽減される扱いで、対象は届出以後の期間に限られます。

個人事業主にはもう一つの動機があります。令和8年度税制改正大綱では、青色申告特別控除を65万円から75万円へ引き上げる方針が示されており、優良な電子帳簿での保存が要件の一つとされています。適用は令和9年分以後の所得税からの予定で、確定した内容は今後の法令で確認が必要です。

法人の場合、加算税の軽減だけを目的に届出を出す必要性は高くありません。会計ソフトを入れ替えるタイミングで、履歴が残る製品を選んでおく程度の意識で十分です。義務である電子取引データ保存を確実に回すことを優先してください。

よくある質問

Q受け取った請求書PDFを印刷して紙で保管するのは違法ですか?

元データを削除して紙だけを残す運用は原則として認められません。2024年1月以降、電子取引で受け取ったデータはデータのまま保存する義務があります。紙に印刷して確認用に手元へ置くこと自体は問題なく、その場合もPDFの原本を保存先に残しておけば要件を満たせます。

Q専用システムを買わないと対応できませんか?

システムがなくても対応できます。共有フォルダに保存先を決め、ファイル名を日付・金額・取引先で統一し、国税庁のサンプルをもとにした事務処理規程を備え付ければ費用0円で要件を満たせます。受領経路が増えて月100件を超えたあたりから、自動化の費用対効果を検討してください。

Q検索要件が不要になる条件を教えてください。

基準期間の売上高が5,000万円以下で、税務調査時にデータのダウンロードの求めに応じられることが条件です。基準期間は法人が前々事業年度、個人事業主が前々年を指します。売上高が基準を超えた場合は検索要件が必要になるため、決算のたびに自社の該当状況を確認してください。